好きな人

好きな人

私の横で好きな人が眠っています。午前四時、小さなシングルベッドに2人で横になって。
彼の眉毛はフワフワ柔らかく、フサフサ豊かで、私に癒しをくれるペットのようです。
彼の閉じた目に生えるまつ毛は鋭く真っ直ぐ長く、彼の眼球の動きに合わせて僅かに震えます。彼の鼻は低いけれど真っ直ぐで、ニンニクのような形をしています。
本人にそれを言うと、私の鼻は真ん中にくびれがあって、鼻の管にボールが入っているみたいだ、君は『ボールさん』だ、と言い返されます。
私の横で眠る好きな人は、狭そうに寝返りを打ちます。その度に、フワフワの毛布がめくり上がります。そして『寒い』とうわごとを言うので、毛布を掛け直してあげるのです。
寝顔があまりにも平和的で、無垢な子どものようなので、私は彼の頬にキスを重ねます。
頬に、ニンニクの鼻に、閉じられたまぶたのうえに、フワフワの眉毛の上に、何度も繰り返しキスをします。
時々彼が目を薄く開けて、黒目がのぞきます。
起こすつもりはなかったので、触れてはいけないものに好奇心が有り余って触れてしまった時のような感覚に襲われ、肩をすくめます。
まぶしそうにして目を閉じ、『まだ寝ないの…?』と彼がぼやきます。


 
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